「美術品/日本画」修復・保存

お知らせ
2024/11/12

過去のブログ紹介 扁額(へんがく)の修復 2

過去のブログ紹介 扁額(へんがく)の修復 2
過去のブログ紹介、前回に続き扁額(へんがく)の修復2についてです。

前回は、修復作品について紹介いたしました。
今回は、額についてです。

具体的な処置に入る前に、まずは扁額についてお話ししましょう。

日本の額は、屋外の寺社、楼門、鳥居などに名称を木彫りした板額から
の始まりです。いわゆる表札のようなもので、時代の流れと共に、
庶民の間では看板の形や、または奉納額としての絵馬が広がっていきました。

もう一つの流れとして、屋外から寺院の屋内へ、書院や座敷の鴨居に
掛けられるようになり、構造が屏風や襖などと同様な骨(木の骨組)と
紙で構築する形態へと変化していきました。和額が発達したのは幕末頃
で、書や南画などの文人趣味の流行によります。特に書の額仕立てが
流行りました。そこから、横に長い扁額(へんがく)の様式が確立されました。

明治以降に洋風の額縁―「洋額」が輸入されてきたことで、
それとは区別するために「和額」と言うようになります。

和額の構造
 和額の構造は、額縁とパネル装から構築されています。

◆ パネルの構造
 骨(木の骨組)に何層もの和紙を工程ごとに違う方法で貼っていく。
 これを「下張り」という。その表面に本紙を貼る。

◆ 下張りの役割
 パネル自体に強度を持たせる。
 骨を補強して歪みが出ないようにする。
 骨と本紙の伸縮の差を吸収し、裂けの損傷をくい止めるなどの、
 本紙の伸縮に対しての緩衝材としての役割をする。
 骨から出る脂(やに)を吸収し、本紙に影響を与えないようにする。


○ 骨(骨下地)
○ 骨縛り(ほねしばり)
○ 同貼り(どうばり
○ 蓑掛け(みのがけ)
○ 蓑(みの)縛り(蓑押さえ)
○ 下袋(下浮け)
○ 上袋(上浮け)
○ 本紙、小筋、大縁


詳細はブログをご覧ください。

伝世舎blog日日是好日
2024/10/16

過去のブログ紹介 扁額(へんがく)の修復 1

過去のブログ紹介 扁額(へんがく)の修復 1
過去のブログ紹介、今回は扁額(へんがく)の修復についてです。

この作品は絹地に絵が描かれています。個人の方が所蔵して
います作品で、長い年月お家の鴨居に飾ってありました。

白い衣を着た女が砧打ちをしている姿です。この作品は絹地に墨、
胡粉、百緑、茶色、赤色の絵具で描かれています。右下に署名と
朱印があります。額の縁(へり)は紙に砂子が蒔いてあります。
縁木(ふち)は木地に黒塗装されています。

絵の様子から能の「砧」を画題にしているものと思われます。
ただ画面が茶色くなってしまってよく分かりません。左上のほうに
何か白いものがありますが、何が描かれているのでしょう?
綿が飛んでいる、人魂が飛んでいる、月である等色々な説が飛び
交いました。何せ「砧」の内容がよく分かりません。知っていれば
判断できたのかも知れませんね。

これが何なのかは修復後に判明しますので、こうご期待です。

続きはブログをご覧ください。

伝世舎blog日日是好日
2024/09/18

過去のブログ紹介 襖(ふすま)の修復 5

過去のブログ紹介 襖(ふすま)の修復 5
過去のブログ紹介、前回に続き襖(ふすま)の修復5(仕上げ)
についてのご紹介です。

前回は骨の下張りについてお話し致しました。

まず本紙に2層目の裏打ちである増し裏打ちを行います。
増し裏をした本紙は※仮張り(かりばり)に張り込んでフラットな状態で乾燥させます。
乾燥後、本紙を仮張りから剥がします。

※仮張り=骨に数層の紙を貼り、表面に柿渋を塗って、耐水性を持たせたパネル。
 裏打ちした本紙をフラットに乾燥させるために使います。

本紙を仮張りから剥がします。

本紙を下張りパネルに合わせて、貼る位置を決めます。
裏打ち紙の余分な部分を裁ちます。

余分な裏打ち紙を裁ちます。

本紙を下張りパネルに貼り込んでいきます。
本紙の裏に生麩糊を塗ります。

全体に水糊(生麩糊を薄く溶いた糊)を塗る。

本紙の下張りパネルへの貼り込みは、絵がずれないように、
また波打ったりしないよう慎重に作業を進めます。

本紙の貼り込み。角の部分は将来シワが生じないよう特に慎重に。

本紙が貼られ、襖の形が出来てきました。

残りの仕上げはブログでご覧ください。

伝世舎blog日日是好日