「美術品/日本画」修復・保存

用語説明
裏打ち(うらうち)
東洋の絵画や書などの作品は、紙や絹など非常に脆弱な素材に描かれています。裏打ちとは、そのような作品を支持し補強するために紙を裏に貼りつけることです。
裏打ち紙の除去
(うらうちがみのじょきょ)
生麩糊で裏打ちされた紙は、水を与えることで除去することができます。これは表具技術の大きな長所であり、数百年以上にわたって引き継がれてきた技術です。そのため、裏打ちをする際には紙、糊の選択が重要になってきます。化学糊を使用した場合、除去は容易ではなく、作品を傷める原因にもなってしまいます。
絵具の剥落止め
(えのぐのはくらくどめ)
絵具は顔料や染料を膠水溶液で溶いたものです。書画の彩色層は、時間を経ると膠がかれてきて、接着力が弱くなり彩色層の絹や紙からの剥離が生じてしまいます。そのため、彩色層の強化と再接着をするために、膠水溶液を補給する必要があるのです。剥離部分の再接着は彩色層の下に膠水溶液を注入して、乾燥するまで重しをかける方法で行います。
折れ伏せ(おれふせ)
肌裏打ち、増裏打ちの後、作品の折れやすい箇所に沿って帯状の薄い紙で補強すること。「折れ」「折れ当て」とも言います。
巻子(かんす)
巻物のこと。
切り継ぎ(きりつぎ)
別工程で進められてきた作品と表具裂を継いで、掛軸の体裁を整える工程。「付け廻し」とも言います。
クリーニング
作品を洗浄すること。ウエット・ドライの方法があります。
【 ウエットクリーニング】
水を使って汚れを軽減させること。水は精製水を使用し、作品の状態によって適切な方法を選択する必要があります。
【ドライクリーニング】
水を使わずに画面表面の汚れを軽減させること。さらに虫糞等の付着物も除去します。衣服のドライクリーニングのように、油や溶剤を使用するものではありません。
絹本(けんぽん)
絹地(絵絹)に描かれた書画、または表具したもの。彩色が施されたものについては絹本着色と言います。→紙本
酸性紙(さんせいし)
紙面の酸性度(pH)が約6.5以下の紙。紙は酸性化により劣化するため長期保存には向きません。また、周囲の紙等を酸化させる原因にもなります。→中性紙
紙本(しほん)
紙に描かれた書・画・文書。→絹本
総裏打ち(そううらうち)
掛軸や巻物の裏面を整えるために裏を打つこと。開いたり巻いたりするときに滑らかになるように、平滑に仕上げる必要があります。宇陀紙に、古糊を使い打ち刷毛で打って接着した後、撫で刷毛で入念に撫でつけます。
中性紙(ちゅうせいし)
紙面の酸性度(pH)が約7前後の紙。弱アルカリ紙も含まれます。酸性化の速度を抑えられるため、長期保存に適しています。→酸性紙
中裏打ち(なかうらうち)
掛軸として一体になった後、さらに裏打ちを施すことを中裏打ちと言います。美栖紙、宇陀紙を使用し、古糊と打ち刷毛で接着。小品の場合は省略することもあります。
糊浮き(のりうき)
作品や表具裂の裏打ち紙が剥がれていること。
肌裏打ち(はだうらうち)
東洋の絵画や書などの作品は、紙や絹など非常に脆弱な素材に描かれています。そのような作品を支持し補強するための紙を直接裏に貼りつけることを肌裏打ちと言います。作品が絹の場合は柔らかいペースト状の糊、紙の場合は水状の薄い糊を使用。主に薄美濃紙を使用しますが、作品に直接貼りつけるため、紙と糊の選択には十分な配慮が必要です。
補絹・補紙(ほけん・ほし)
作品の欠失部分の形に従って絹または紙を繕うこと。絹は補絹、紙は補紙と呼びます。作品の風合いや材質、強度などに近い絹や紙を選択し、加工して使用します。
本紙(ほんし)
作品本体のこと。絹本でも本紙と呼びます。
増裏打ち
肌裏を打った後、さらに施す裏打ちのことです。必要に応じて複数回行います。掛軸の場合は、表具裂との厚みや収縮を調整。美栖紙、大判美栖紙に、古糊を使い撫で刷毛で撫でつけ、打ち刷毛で圧着させます。